前回、ホピ族を守護する存在である「カチナ」について紹介しましたが、今回はより詳しくカチナの魅力を紹介していきましょう。ホピ族の人々がその力に頼り切って堕落してしまったために、現在では神聖な山へと帰ってしまったカチナたちですが、その力にふれるための方法は残っています。
ホピ族の人々は、頭をすっぽりと覆うカチナを象徴した仮面をつけ、さらに伝統的な衣装に身を包んで、歌い踊るという神聖な儀式を通して、自らの身体にカチナの精霊を呼び込むことができるのです。このとき、儀式に参加している人間と呼び込まれたカチナは一体化するのだそうです。
カチナ2
儀式を通して、自らの身体に宿ったカチナから得た力、すなわち「カチナの魂」を込められたものが「カチナ人形」であり、自らの大切な人にプレゼントして、その力によって守って貰えると考えられてきました。つまりは、姿を失ってしまったカチナを人形という形で、蘇らせるといってもいいかもしれません。
現在では、お土産として、ホピ族だけでなく、さまざまなネイティブ・アメリカンによって作られるようになっているカチナ人形ですが、本来は儀式によって作られる、精霊の力が込められた特別なものだったわけです。当然ながら、本物のカチナ人形を手に入れるのは困難であり、お土産のものは姿は一緒でも、その本質は別物といえるでしょう。
そんなカチナには無数の種類がありますが、いくつかのポピュラーな役割もあります。リーダー的な役割を持ち、もっとも霊的に高位である「チーフ」には、「アハオイル」「グランドマザー」「エオトト」などと呼ばれるカチナ、儀式を守る「ガード」には、「オウル」「ヒリリ」などがいますし、同じく儀式に関連し、踊りを通して儀式を正しく導く、もっとも一般的な「ダンサー」、さらに春の儀式であらわれる「ランナー」という役割も有名です。

SakwaWakaKatsina, Katsina-Vache-Bleue, poupée kachina hopi. Paris, Laboratoire d'anthropologie sociale, Collège de France.
SakwaWakaKatsina, Katsina-Vache-Bleue, poupée kachina hopi. Paris, Laboratoire d’anthropologie sociale, Collège de France.

他にも、鳥のカチナ、動物のカチナ、虫のカチナ、植物のカチナ、星のカチナなども存在しており、全てのものに神性を感じるというのは、日本の八百万の神と同じような雰囲気があります。以前に紹介したように、セドナを日本人がどこか懐かしく感じるのは、このような精神的な文化が共通しているせいかもしれません。
以前紹介したといえば、日本とも共通する要素がある「赤い土」を象徴するカチナも存在します。「コイヤムシ」、日本語に直すと「泥頭」を意味するこのカチナは、儀式の中で道化師的な役割を果たし、子供たちを守護する存在であり、なおかつ祖先の霊も象徴しているのだそうです。
カチナを通しても感じられる、セドナと日本の共通点。来週は、日本で行われる有名な儀式とも、共通した要素を持っているカチナについて紹介しましょう。