前回は、風水に関連づけてセドナの大地に関して考えてみましたが、今回も引き続き大地にフォーカスを当ててみましょう。とはいっても、土地ではなく、そこから取れる「砂」についてです。
強力なパワースポットであるセドナの大地には、当然ながら多くのエネルギーがチャージされています。赤く火のエネルギーを持つ赤土や、太古の藻が化石となったケイソウ土など、セドナの大地は多くの恵みとエネルギーを与えてくれますが、そんな大地の力を利用した癒しの儀式であり、現在では芸術にもなっているのが「砂絵」。
砂絵は、大地が持つ力を引き出し、精霊の力と共に癒しを与えて貰うことを目的として、ネイティブ・アメリカンが考え出したもの。現在では、セドナの近くにも住んでいるナバホ族が作るものが有名ですが、様々な地域のネイティブ・アメリカンが砂絵の儀式を行っていたとされています。
砂絵を使った儀式が始まる前には、ベースとなる砂を敷き詰め、そこに5〜7色の砂で絵を描いていきます。このとき描かれるものは、神話に基づいた象徴であり、神々、聖なる山や虹、動物、昆虫など様々なものがありますが、癒しを得る人の状況にあわせて、象徴や構成は変わることもあるようです。絵が完成したならば、そこには治癒力をもった精霊が宿ります。そこで癒しの儀式の中で、砂絵に描かれた象徴から砂を一部とって患者の身体につけることで、精霊の癒しの力を流し込みます。
基本的に儀式で使われた砂絵は、儀式が終わると同時に破壊されます。これによって、砂に宿っていた存在が元の場所へ帰るわけですが、このようなタイプの儀式は、遠く離れたチベットでも行われています。
チベットでは、仏と一体化するための修行として砂絵が用いられます。このときは、基本的に5色の砂が用いられ、それによって「曼荼羅」と呼ばれる仏の世界をあらわす図像を描き出し、そこに諸仏を呼び込んで、自らと一体化してそのエネルギーを体感するのです。こちらも、最終的には砂絵は破壊されて、それによって招かれた仏のエネルギーを解放します。
使われ方は若干ことなりますが、ほとんど同じ手法が使われています。ネイティブ・アメリカンの場合も、使われる色が5色だという説もあり、その場合は、チベットと全く同じ「青・赤・黄・白・黒」の5色であり、古来から伝わる陰陽五行の法則に則った色合いとなります。陰陽五行は、世界全てを象徴するものですので、これらの色を使いこなすことで、さまざまな自然界のエネルギーを制御できるわけです。
以前に紹介した、節分もそうですが、遠く離れているように思える東洋と西洋でも、その根底には似たような精神性が流れていることを、セドナとそこに住むネイティブ・アメリカンの人々は教えてくれます。近代的な文明によって失われてきたこのような叡智を、現代までも伝えられる場所だからこそ、セドナは世界的なパワースポットなのでしょう。
砂絵に関して、本格的な儀式を見ることは難しいですが、現在でもナバホ族によるライブ砂絵を見ることは可能ですし、芸術作品としての砂絵は、絵画のように鑑賞できるような形で保存されているものも多くありますので、セドナを訪れた時は、大地のエネルギーと精霊のエネルギーを宿す、砂絵に是非触れてみて下さい。